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福祉の現場で思いカタチ
~私が起業した理由わけ・トライした理由わけ

志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!

Vol.79 連載第1回
同級生との思い出づくりが
音楽に目覚めるきっかけに‥‥

後藤 聖子(ごとう しょうこ)

ヨーロッパでオペラ・オペレッタ・ミュージカル・コンサートなどの舞台活動ののち、音楽を自由に奏でる楽しさを分かち合いたい、きらきらと人生を輝かせる時間を作りたいと「シュピーレン」を設立。障がい児・者、高齢者等の福祉施設で音楽ワークショップファシリテーターとして活動。併せて、演奏、演出・コンサートの企画をおこなっている。2024年1月NPO法人を取得。音楽健康指導士。知的障がい者理解基礎講座、発達支援サポーター講座等修了。

取材・文 石川未紀

――ヨーロッパを中心に、オペラやミュージカルの世界で活躍されていたそうですね。

 はい。主にウィーンで活動していて、福祉の分野に身を置いていたわけではありませんでした。ただ、今振り返ると、伏線はあったのかなと思っています。

 私は小さい頃からお世話好き。近所に知的障がいのある同級生がいたのですが、先生から登下校時や日常の見守りをする役をお願いされるような子どもでした。また、祖母が医師だったのですが、当時は高齢者の方の往診に私がついていくこともありました。子どもの私が行くと、高齢者の方が「かわいいねえ」ととても喜んでくださり、それが子どもながらにうれしかった記憶があります。
 人に喜んでもらえるのは、とても素敵なこと、楽しいこと、とインプットされていたと思います。

 音楽に目覚めたのは中学3年生の時でした。先にお話しした知的障がいのある同級生とは高校では離れ離れになります。それで何か思い出を作りたいと考えました。

 中学3年生の11月、学校で音楽祭がおこなわれることになり、彼女と一緒に音楽を楽しめないかと考えたんです。というのも、他の授業では、退屈そうにしていた彼女が音楽のときだけは生き生きと楽しそうにしていたからです。詳細は忘れてしまったのですが、おそらく童謡のような音楽を彼女と一緒にやりました。すると、彼女はもちろん、会場中がみんな笑顔になって、保護者まで一緒に手拍子をしてくれました。私は、その光景を見て「音楽はすごい!」と感動して、目覚めてしまったんです(笑)。

――それまでも音楽に親しんでこられたのですか?

 いいえ。ピアノは少し習っていたものの、やめていました。習い事はバレエと絵だけ。進学も公立の普通高校を受けるつもりでいました。
 けれどもこの一件で、「私は音楽の高校に行く!」と宣言したのです。家族も私と似たタイプのようで、「それならやってみたら」と背中を押してくれました。しかし、中学の先生に相談したら仰天していました。何しろ、中3の秋も深まるころですから(笑)。
 ところが、そのことを知った当時の音楽の先生が、朝の7時半から始業までの1時間、毎日ご指導くださって‥‥。受験に最低限必要な知識、実技を叩き込んでくださったんです。

――それはすごいことですね。

 ええ。今思うと本当に奇跡のようですね。それでなんと、受かったんです。大学進学の際には、音楽科声楽専攻に進むのですが、当時、私には日本が少し窮屈に感じていたので、単身ウィーンに渡り、そこでオペラ科に学生として在籍、その後も、舞台演出助手やミュージカルなどにも出演していました。17年間ウィーンで過ごしましたが、祖母の介護もあって日本に帰国。その後、私の妹の知人から「障がい者のための生活介護事業所を開設するので音楽でみんなを楽しませることはできないか」と声をかけられたのが、この活動を始めるきっかけとなりました。

 私がおこなっているのは「音楽療法」ではありません。施設の方にも、成果を求めたり、療育をするつもりはないということをお伝えしました。私は自身を「ファシリテーター」(進行役の意)と呼んでおり、ともに音楽を楽しむ仲間の一人だと思って活動しています。
 誰もが楽しく音と戯れることを頭に思い浮かべた時、私の中にドイツ語の「spielen(シュピーレン)」という言葉が思い浮かびました。そして、2015年、横浜市戸塚区の生活介護事業所「舞岡の風」で「シュピーレン」は誕生しました。
 音楽は楽しいもの。「素敵な音楽の世界をみんなと共有して、お互いにその喜びを分かち合いたい」。そういう思いで活動をしています。

――「ともに楽しむ」のはとても素敵なことですね。次回は具体的な活動内容について伺います。

第2回は3月13日(木)掲載

後藤聖子さん(ごとう しょうこ)さん
NPO法人シュピーレン理事長

フェリス女学院短期大学音楽科声楽専攻卒。同研究科修了(現フェリス女学院大学)。1989年オーストリア・ウィーンに渡欧。ウィーン・プライナー・コンセルヴァトリウムオペラ科及び演劇科で学び、オペラ科演出助手として主にモーツァルトのオペラ作品に関わる。その後ヨーロッパ各地の音楽祭やコンサートに出演。98年よりミュージカル「王様と私」にオリジナルキャストとしてヨーロッパ各地にて出演。2006年帰国後もウィーン、日本にてソロリサイタルや各種コンサートを開催。2015年より、生活介護事業所等にて音楽ワークショップ「シュピーレン」のファシリテーターとして活動。コンサートの企画・演奏・演出もおこなっている。2024年1月にNPO法人シュピーレンを設立。理事長に就任。音楽を通じて喜びを分かち合い、きらきらと人生を輝かせる時間を一緒につくる支援をめざして活動中。

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100歳時代の新しい介護哲学

「ファンタスティック・プロデューサー」で、ノンフィクション作家の久田恵が立ち上げた企画・編集グループが、全国で取材を進めていきます

本サイト : 介護職に就いた私の理由(わけ)が一冊の本になりました。

花げし舎編著「人生100年時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由」現代書館