
受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
閉塞感でいっぱいだった私に気付きを与えた闘病記

ボディ・サイレント
おすすめの理由
コロンビア大学人類学教授である著者が、48歳の時に脊椎腫瘍を発症してからの約20年間にわたる闘病記である。著者の言葉を借りれば、ごく標準的な白人・男性・アメリカ社会の主流に属する者だった“私”が、身体麻痺者となって、異人(エイリアン)・自国の中の難民となった。そこで、自ら身をおく所になった身障者社会の実地調査に乗り出す。人間関係の縮小や家庭での役割の変化がもたらす喪失感さえ楽しんでいるかのように、自分の内外に起こる変化を人類学者として冷静に分析して、現代社会が抱える問題にまで発展させていく。読者は、難解ではなく豊かな表現力に導かれて、筆者が生きることの価値を見出した自己への旅を辿ることになる。この本と出会った時、私は施設の長期入所者のQOLを高めるというテーマを持て余し、閉塞感でいっぱいだった。“自分で作った壁は心の麻痺を引き起こし、思考の静寂を招く”という言葉は、頭の中の靄を払った。健常者・身障者・高齢者、人として私の延長線に在るのだと気づき、その後の介護職としての姿勢に影響を受けた一冊である。
(セントケア赤羽/セントケア・ホールディング(株) 横田理恵子さん・ケアマネジャー)