
受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。

俺に似たひと
親父を、介護してみた。
「これから、『俺に似たひと』について語ろうと思う。『俺に似たひと』とは、ついひと月ほど前に亡くなった俺の父親のことである」。事業家、文筆家として活躍する著者が、父親の介護を続けた1年半。看護師向けのwebマガジンで圧倒的な人気を誇った連載の書籍化です。
母親のほとんど唐突な死。その後、父は一気に老いました。
昭和という時代。町工場で腕のよいプレスの型職人で、社長だった父親。そんな「俺に似たひと」のために、還暦を迎える著者は、仕事帰りにスーパーでとんかつを買い、肛門から便を掻き出し、「風呂はいいなあ」の言葉を聞きたくて入浴介助を続けます。
仕事を続けながら、今までは決して相容れないと思っていた父親に対して、義務感から始めざるを得なかった介護。著者はその中で、父親を発見し、老人を発見し、さらには「衰退という価値」を発見していきました。
第1章の最初の項は、こう締めくくられます。
「以下は『俺に似た人の物語』である。物語という形式でしか語りえないものがあると言ったのは、わが盟友である内田樹だが、俺が体験した二年間こそが、その語りえない時間だったということだろうと思う」。
介護の専門職として、その人がもつ「物語」を通して老いと介護を知るという体験は、とても価値あることではないでしょうか。
(ホームヘルパー にんじん)