
受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。

ペコロスの母に会いに行く
岡野雄一=著
発行:西日本新聞社
ISBN:978-4-8167-0853-4
価格:¥1,260(税込)
発行:西日本新聞社
ISBN:978-4-8167-0853-4
価格:¥1,260(税込)
忘れることは、悪いことばかりじゃない
ペコロスとは、小タマネギのこと。著者の岡野さんが自身の“ツルツル頭”を称したペンネームです。東京の出版社で務めていた岡野さんは、40代で父母のいる長崎にUターン。父が亡くなった年から、母に認知症の症状が出始めました。母との日々のやりとりを、そして母と父の過去の出来事を、岡野さんはマンガに描きました。
長崎での自費出版から火が着き、全国的なブームに。そして今回、今までの作品をまとめ再構成した本書が発行されました。2013年の夏には同タイトルの映画公開が予定されています。
長崎弁と穏やかなタッチで描かれる4コママンガは、家族を介護する人を始めとして、多くの人から共感を得ています。そこでは家族愛、といった大上段に構えたものではない、ユーモアと優しさにあふれた日常があり、そして長い人生を歩んできた母への自然で温かな眼差しがあるように思います。
グループホームにいる母に、著者が会いにいったエピソードでは、認知症のBPSDで気持ちが不安定になっている母に対し、岡野さんが帽子を脱いで“ペコロス頭”を見せる場面があります。その頭を見て息子の存在を理解し、とたんに笑顔になる母を見て、岡野さんは「ハゲててよかった」としみじみ……。
「老い」「認知症」というシビアでもあるテーマを描いているのですが、作品にあふれる陽だまりのような温かさが、老いること、忘れることは、悪いことばかりじゃないと、私たちに教えてくれるような気がします。
リラックスしたいとき、クスっと笑いたいとき、仕事が少し苦しくなったとき、ぜひ読んでいただきたい一作です。
(メソメソ)