
受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
悼む行為から介護のあり方を考える

悼む人
おすすめの理由
数年前にテレビ化もされた『永遠の仔』の流れをくむ1冊である。主人公の男は縁もゆかりもない、さまざまな理由で亡くなった人々を新聞や雑誌等で知っては全国を訪ね歩き、亡くなったその場所でただひたすら死者を悼む。「(亡くなった)その人は誰を愛し、愛され、感謝されたのか」を可能な限り周囲に聞き取り、その人をこの世で唯一無二の存在として記憶しながら死者を悼む。それは一般的に「死んだって仕方がない」と思われる悪人に対しても同様である。彼と死者は全くの無関係で、縁もゆかりもない間柄であるのに、野宿をしながらただひたすら全国行脚する男の姿に、多くの人は疑問、不審、偽善、疑惑、不快等々を覚える。
しかしなかには、自分が亡くなったときに悼んでもらって覚えておいて欲しいと願う人、亡くなったかけがえのない人のありのままを受け入れてくれて心休まる人などもいる。本書は「死」をベースに「生」が際立つ内容になっており、やはり生きることの意味を考えさせられる。高齢者の死と近い場所にいる私にとって、お年寄りとの介護を通じた関係性は「これでいいのだ」というひとつの回答が得られたように思った。またこの主人公が言うように、「その人は誰を愛し、愛され、感謝されたのか」というプラスの面でお年寄りを捉えてゆければ、自ずと利用者・介護者双方の関係性は温かなものになるのではないか。ただいろいろな利用者がいるために、これが案外現場では難しいのだが…。
(ケアワーカー・のりぽんさん)