
受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
自身の父を看取る体験を通じて、“無名”の人生を描く力作

無名
おすすめの理由
沢木さんは、ファンの方も多いとかと思いますが、ルポライターから出発し、現在もノンフィクション作家、小説家等々で活躍されている方です。この本に限らず、世の中の大勢の人が「無名」で終えていくなか、そうした人々の人生に焦点を当ててきた人です。上からでも下からでの目線でなく、善し悪しを問うのでもなく、個々のスタンスで、思いで、考えで精一杯生きている市井の人々の生き様を、淡々とした筆致であぶりだしていきます。本書の特徴は、彼にしてはめずらしく、プライベートな部分、つまり父子関係や彼の生い立ちなどに触れている点です。避けては通れない親の介護や死。有名人の介護にまつわる本はいろいろと出ていますが、これまで当たり前に存在していた人がいなくなるということ、周囲の動揺や受け止めかたなどは、すごく身近で心に落ちる気がします。
著者の父親は博学でありながら、「一合の酒と一冊の本があればよい」というつつましい人でした。介護をしている皆さんも、「無名」であっても素晴らしい人たちとたくさん出会っていることでしょう。どんな人でも歴史があり、生き様があり……。介護の原点でもある、「人」というものの存在が一層好きになる本だと思います。
(M.Iさん・ホームヘルパー)