
受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
認知症の母と向き合うことで生まれた“介護詩集”

マザー
おすすめの理由
薬母は可愛そうだという 子どもも育て上げ 今からゆっくりしようというときに 可愛そうだとみんながいう
いや母は今が一番幸せな気もする 本当の母がここにはいる
いつも周りを気に掛けていた母 自分自身をすり減らして
……(略)……
本当の母の姿がここにはある 自分の思うままに生きる 天衣無縫の母がいる
父が用意した 病気を進まなくするだろう薬がある 病気がよくなるかもしれないという薬がある
その薬を飲むとき 決まって母は 一瞬 いやな顔を見せる
誰のために生きているのか 母さん おれのためだけに生きているなら もう大丈夫だ
詩人・児童文学作家である藤川幸之助さんのお母様は、60歳のときにアルツハイマー病との診断を受けました。当時の著者は小学校の教員として忙しい日々を送り、盆と正月にしか実家へは帰らないなか、同居していたお父様がお母様の介護にあたっていました。そのお父様も亡くなり、認知症の母と向き合うことになった著者。そこから生まれたのが、この詩集です。力強く、率直に、非常にわかりやすい言葉で語られる詩には、“生”の生々しさ、いとおしさ、きらめき、そして尊厳が脈打っている気がします。『認知症の本』と身構える必要はまったくありません。気軽な読み物として、しかし人が人を支えることの意味や奥深さが身にしみる1冊ではないでしょうか。
(とんぼさん・ホームヘルパー)