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福祉の現場で思いカタチ
~私が起業した理由わけ・トライした理由わけ

志をもってチャレンジを続ける方々を、毎月全4回にわたって紹介します!

Vol.79 連載第3回
音楽をともに楽しむ喜びを
多くの人に! NPO法人設立へ

後藤 聖子(ごとう しょうこ)

ヨーロッパでオペラ・オペレッタ・ミュージカル・コンサートなどの舞台活動ののち、音楽を自由に奏でる楽しさを分かち合いたい、きらきらと人生を輝かせる時間を作りたいと「シュピーレン」を設立。障がい児・者、高齢者等の福祉施設で音楽ワークショップファシリテーターとして活動。併せて、演奏、演出・コンサートの企画をおこなっている。2024年1月NPO法人を取得。音楽健康指導士。知的障がい者理解基礎講座、発達支援サポーター講座等修了。

取材・文 石川未紀

――前回はシュピーレンの具体的な活動の様子を伺いました。音楽ワークショップでの体験はさまざまな発見があったのですね。

 はい。生活介護事業所「舞岡の風」のほかにも、放課後デイサービスや障がい者グループホーム、高齢者施設などでも活動をおこなってきました。並行してコンサートの企画や演奏、演出などもおこなっています。ご利用されている方の家族も招いて、わくわくイベントコンサートなども開催しました。ご家族の方は普段、オペラやミュージカルを間近で観る機会が少ないので、とても喜んでくださいました。こうしたイベントもどんどんやっていきたいと思っています。

 この活動のきっかけとなった「舞岡の風」では、2015年から継続して週1回ワークショップ・シュピーレンを開催しています。季節ごとにイベントもおこなっており、印象に残っているエピソードもたくさんあります。

 ハロウィンのときは、「ちょっと怖くて怪しい音楽」を体験してもらいました。部屋の電気を消して、カーテンを閉め、「ゲゲゲの鬼太郎」をみんなで合奏したら、本当に怖い雰囲気に包まれました。直後、私はカーテンをサーっと開けて電気をつけ「魔女の宅急便」をわくわくと楽しい感じで弾き始めたんです。そうしたら、職員さんが突然、モップにまたがり「魔女の宅急便」になって登場! 会場は大盛り上がり、生み出される音は生き生きとしました。職員さんも一緒に楽しんでいるからこその「共演」となりました。

――聞いているだけで、こちらも楽しくなってきますね。

 はい。前回も申しましたが、利用されている方の中には聴覚過敏の方もいます。でも、その方は聴覚過敏があるから、音楽を通した活動はできない、という先入観を持たないようにしています。福祉に関わる人は多くの知識を持つがゆえに、「できない、向かない」と思ってしまいがちですが、実は苦手な音や音域があるだけで音楽が嫌いなわけではない方もいます。

 私は自分が好きな音楽を、苦手と思っている人や、音楽に触れる経験が少ない人にも「こんな世界があるよ」と誘って一緒に楽しみたいんです。

 ほかにもこんなエピソードがありました。利用者の方の中に、集団で何かをすることが苦手な方がいます。いつも「話しかけないで」オーラ全開で、シュピーレンも不参加だった方がいたんです。ところがクリスマスコンサートの時に、何だか楽しそう、と思ったのかもしれません。いきなりの初参加。しかもソロで歌ったんです。素晴らしいですよね。その姿に職員の方も感動して「音楽ってすごい力がある」と。
 その彼女は、帰りのバスの中で「またやりたい。企画して!」と要望していたそうなんです。音楽が嫌いなわけでも、集団が常に苦手なわけでもないのです。「無理」「できない」ではなく、「一緒に楽しんでみる」そう提案していくことが大事だと実感した出来事でした。

 私の活動のベース「舞岡の風」以外にも、ご縁のある施設でおこなってきましたが、このような出来事が何度もあり、職員やご家族の方から「もっといろんなところでシュピーレンの活動をしたら、みんながハッピーになれるのでは」と提案をいただいていたんです。そこで、私ももっと多くの人と出会い、参加者を増やしていきたいとNPOを立ち上げようと決意しました。
 当初は、NPOで活動すればよいと考えていたのですが、周囲の人に相談したら、せっかくなら法人格を持ったほうが今後の活動がしやすくなる、とアドバイスを受けまして‥‥・。また、賛同してくださる方もいたので、思い切ってNPO法人を2024年1月に立ち上げました。右も左もわからぬままスタートしましたが、友人・知人、役所の力をたくさん借りながら、楽しく活動しています。

――次回は、NPO法人「シュピーレン」としての今後の活動について伺います。

第4回は3月20(木)掲載載

後藤聖子さん(ごとう しょうこ)さん
NPO法人シュピーレン理事長

フェリス女学院短期大学音楽科声楽専攻卒。同研究科修了(現フェリス女学院大学)。1989年オーストリア・ウィーンに渡欧。ウィーン・プライナー・コンセルヴァトリウムオペラ科及び演劇科で学び、オペラ科演出助手として主にモーツァルトのオペラ作品に関わる。その後ヨーロッパ各地の音楽祭やコンサートに出演。98年よりミュージカル「王様と私」にオリジナルキャストとしてヨーロッパ各地にて出演。2006年帰国後もウィーン、日本にてソロリサイタルや各種コンサートを開催。2015年より、生活介護事業所等にて音楽ワークショップ「シュピーレン」のファシリテーターとして活動。コンサートの企画・演奏・演出もおこなっている。2024年1月にNPO法人シュピーレンを設立。理事長に就任。音楽を通じて喜びを分かち合い、きらきらと人生を輝かせる時間を一緒につくる支援をめざして活動中。

季節を音楽で感じる

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100歳時代の新しい介護哲学

「ファンタスティック・プロデューサー」で、ノンフィクション作家の久田恵が立ち上げた企画・編集グループが、全国で取材を進めていきます

本サイト : 介護職に就いた私の理由(わけ)が一冊の本になりました。

花げし舎編著「人生100年時代の新しい介護哲学:介護を仕事にした100人の理由」現代書館